BOBAN and MARKO MARKOVIC

Boban Markovic ボバン・マルコヴィッチ
1964年5月、ジプシーの祝祭日として最も重要な聖ジョージの日に生まれる。彼の故郷、南セルビアのVladicin Han(ブラディチェ・ハン)は、ロマ、ジプシーの伝統と豊かな音楽文化を受け継ぐ地である。
ボバンの父も祖父も音楽家であった。5歳からトランペットを学び、村の友人たちと演奏を始めた。サッカー少年でもあったが、トランペット奏者になることを目指し、父の催すコンサートや結婚式の演奏で技を磨き、
20歳で自分のオーケストラを立ち上げ、トランペット奏者として数々の栄誉を受賞し、世界的に活躍するようになる。
こんなエピソードがある。ロンドンのオーケストラに、世界中のトランペットマエストロの一人として招かれた。リハーサルで楽譜を渡されたが、彼は譜面で音楽を学んでいないため、リハーサルができないという事態になった。
ボバンは常に耳で覚え、ハートから生まれるものを音にしてきたのだから。結局指揮者が楽曲を演奏し、それをその場で耳で覚えて本番に臨んだと言う。
2006年から息子マルコが18歳でバンドの一員となる。マルコは現在バンドのメインソリスト、アレンジャーとして活躍し、世界でツアーを行い数々の作品を発表している。
Marko Markovic マルコ・マルコヴィッチ
1988年生まれ。家族と共に南セルビアのブラディチン・ハンで育つ。
父ボバンはバンドのツアーやレコーディングで家にいる時間はわずかであったが、父を敬愛し強く憧れるマルコは、5歳からトランペットの練習を始め父を目指した。トランペットへの情熱は続き、
子供時代の午後はすべて練習に打ち込んだ。彼の最初のトランペットの先生は、父ボバンの師でもあった祖父だったという。
ボバンはマルコを家に残し、旧ユーゴスラアビアやヨーロッパを巡るツアーにあけくれ、マルコが12歳になるまで息子の才能に全く目を向けなかったと言う。ある日、ボバンの妻が、息子の練習の成果をほんの少しでいいから聴いて欲しいと強く迫った。そしてボバンは、息子の素晴らしい上達ぶりに驚嘆することになる。いくつか伝統的な曲を弾いてみてくれとマルコに頼むと、見事な演奏をボバンに披露した。
今までずっと目を留めてこなかった息子の音楽に感動した彼は、遂に息子をバンドの一員に迎えることになる。
マルコが14歳の時、帰宅したボバンはマルコに言った。鞄に荷物をまとめてオーケストラに加わるようにと。リハーサルも必要なかった。マルコはハートから生まれる曲をもう学んでいたのだった。
11歳からずっと、一日10時間も練習してきた彼の夢は、ただの子供時代の憧れに終わらなかった。2002年からツアーに参加し、マルコの演奏と作曲への情熱はメンバーの信頼を集め、今ではメインソリスト、
そしてアレンジャーとしてバンドを率いている。エミール・クストリッツァプロデュースによる映画「Gucha! The Distant Trumpet」にアクターとして参加し、音楽も演奏している。